「小売の力で未来をつくるサステナブルグロース実現エグゼクティブセミナー」実施レポート

2024年9月12日に、「小売の力で未来をつくるサステナブルグロース実現エグゼクティブセミナー」を開催しました。ファミリーマート、バローホールディングス、コープかごしま、アクシアル リテイリングが自社の取り組みを紹介し、食品小売業が地域社会課題の解決と経営的成長どのように両立させるのかを探りました。
本レポートでは、講演のハイライトや、参加者から寄せられた声をまとめてご紹介します。
公益財団法人流通経済研究所 上席研究員 石川 友博
研究員 寺田 奈津美

1 「人・社会・環境にやさしい流通へ:小売の力で未来をつくる具体的アプローチと戦略」
公益財団法人流通経済研究所
流通・店頭・環境部門副部門長 上席研究員 石川 友博
研究員 寺田 奈津美

前半では、調査結果をもとに、サステナビリティに関する消費者意識で留意すべき点として、「どれが環境によい商品かわからない」「エコ疲れ」などを挙げ、それに対する対策を述べました。また、食品小売業のサステナビリティ経営実践のポイントとして、ROESGの経営目標への導入、取締役直下へのサステナビリティ専任組織の設置、人的資本経営の実践の重要性などを解説しました。
後半では、食品小売業を中心に、社会課題解決と経済成長の両立を目指す企業の成功事例を紹介し、そのポイントを探りました。
事例から、
① サステナビリティの事業戦略への統合
② 従業員のサステナビリティの自分ゴト化
③ 社内外への情報開示・発信
の3つが重要なポイントであることを指摘しました。また、今後の食品小売業のサステナビリティ推進の方向性として、「環境・地域・健康」の取り組みを通じて、店舗が街のコミュニティの中心の存在になることを提起しました。
○聴講者の方から寄せられた主な感想
「消費者のサステナビリティに関する認識の調査結果が想像していた結果と異なり非常に参考になりました。」
「サステナビリティ経営の肝は、経営トップの理解であることは認識していたが、『活動が進まないのは、経営者が理解してくれないからだ』というところで考えが止まっていた。しかし、経営者に理解させるためのスタッフを育成し、その能力を獲得させるという視点は非常に参考になった。」
2 「~持続可能な社会の実現に向けて~ファミリーマートのサステナビリティの取り組み」
株式会社ファミリーマート
執行役員 マーケティング本部 サステナビリティ推進部
部長 岩崎 浩 氏

ファミリーマートの環境対応、社会課題解決、多様性尊重の取り組みが紹介されました。環境対応では「ファミマecoビジョン2050」を掲げ、脱炭素やプラスチック対策、食品ロス削減といった取り組みが着実に進捗されていることが紹介されました。社会課題解決においては、同社の広いイートインスペースの活用など、店舗が推進役となった地域交流事例が示されました。多様性の尊重では、LGBTQ理解促進を目的としたレインボーカラーの商品展開が注目されました。
着実な環境面での取り組み推進、店舗や商品とサステナビリティ政策の連携、消費者とのコミュニケーション、そして社内での浸透活動について、参加者からも大きな反応があり、サステナビリティをマーケティングやブランディング活動としても捉えていく視点が印象的でした。
○聴講者の方から寄せられた主な感想
「サステナの取り組みはアピールしないと消費者には届かないというのは、本当にそうだと思いました。ファミリーマート様のアピールの仕方はとても優れており、当社でも参考にしたいと思いました。」
「サステナビリティに関する活動をマーケティングの手法・見方で社内外に発信していくという点が非常に興味深かったです。世の中にとって良い取り組みは、広く知ってもらう大切さを改めて知ることができました」
ファミリーマートのサステナビリティ推進活動の詳細はこちら👇

3 「100年後のこどもたちに繋ぐバローグループのサステナビリティ推進活動について」
株式会社バローホールディングス
管理本部 サステナビリティ推進室
室長 秋元 武 氏

バローホールディングスは、100年先も続く企業であるために、持続可能な社会の実現を目指し、地域の社会課題解決に取り組んでいます。地域のお客様にとってなくてはならない存在になることを目標に、自社の展開する地域の課題を捉え、最優先で取り組むべき事項に注力しています。単なる商品・サービスの提供だけにとどまらず、「バローでの買い物を通じて社会とつながる」という独自の価値を生み出し、ファンを獲得することを目指しています。
具体的には、フードドライブの取り組みや自治体との連携を通じて、特に「子育て支援」や「こども応援」に力を入れていることをご紹介いただきました。
○聴講者の方から寄せられた主な感想
「少ないリソースの中で、注力しなければならないことに確実に取り組んでおられる姿勢に感銘を受けました。」
「自社の持続可能性を最大限に高めるために、重点課題を子育てや子ども支援に絞って、地域で広く活動されていることに驚きました。また、自社だけでなく、自治体や社会福祉協議会、スポーツクラブと連携している点にも感銘を受けました。」
バローグループのサステナビリティ推進活動の詳細はこちら👇


4 「つながる力で、豊かな『地域の食とくらし』の創造を目指す 生協コープかごしまのサステナビリティ」
生活協同組合コープかごしま 組織運営本部
本部長スタッフ 溝口 琢 氏

コープかごしまでは、「鹿児島県から出られない」という地域別生協制ゆえの事業活動範囲の制約がある中で、鹿児島県の人口減少や高齢化といった社会課題に対応するため、サステナビリティの推進に取り組んでいます。農畜産業が盛んな地域特性を生かし、地産地消を中心とした地域とのつながりを目指した取り組みについてご紹介いただきました。
特に、廃食油を利用したバイオディーゼル燃料の活用に挑戦している点は、他社には見られない先進的な取り組みとして注目されました。
○聴講者の方から寄せられた主な感想
「廃油の活用方法に驚いた。費用は掛かると思うが、自社で使用できるものにリサイクルできてとても有効だと思った。」
「食用油を活用した取り組みは、航空業界(SAF)でも近年注目されている技術であると拝見しています。(コープかごしまでは)車両への活用ということで、非常に有益な取り組みであると感じました。」
コープかごしまのSDGsの取り組みはこちら👇
https://www.kagoshima.coop/sdgs
5 「アクシアル リテイリングの持続可能な社会の実現に向けた取り組み」(Web講演)
アクシアル リテイリング株式会社
執行役員 CSR・広報部長 石原 照門 氏

同社グループが目指す「グランドデザイン」、「健康経営」、「環境経営」、エシカル商品「Hana-well」など、持続可能な社会の実現に向けた取り組みを報告いただきました。
特に、持続的成長の基盤であるTQM活動や、健康経営の一環として、あいさつ時にピースサインを交わすなど、職場でのアサーティブコミュニケーションの事例は興味深かったです。環境面では、食品ロスやプラスチック削減に加え、ZEB店舗やモーダルシフトの取り組みが注目されました。
また「Hana-well」は、障害者がデザインした包装の活用や規格外品の商品化など、事業と社会課題対応の一体化を象徴するものであり、強く印象に残りました。
○聴講者の方から寄せられた主な感想
「体系立てて理念達成に向けて活動されていることが理解できました。またAI活用により生産性向上に注力され、大きい効果が出ていることもよくわかりました。」
「環境面で多面的な活動をされていることがわかり、大変参考になりました。」
アクシアル リテイリングのサステナビリティ推進活動の詳細はこちら👇

おわりに
今回のセミナーでは、食品小売業の取り組みについて非常に参考になったとのお声を多くいただきました。今後も食品小売業を対象としたセミナーを引き続き企画してまいります。また、今後は製造業、卸売業、外食産業、物流業といった食品流通を支える業界にも注目し、さらなる企画を進めていく予定です。ぜひご期待ください。
<注>
本レポートは、筆者がリアルタイムで聴講した内容をもとに記述しています。聞き違いなどを含んでいる可能性がある点にご留意ください。
