【サステナブルPB特集!】<第1回>なぜ今、サステナブルPBなのか?――広がる企業の取り組みと高まる消費者意識

公益財団法人流通経済研究所
研究員 寺田 奈津美
こんにちは。弊所では、流通業を中心に、サステナビリティやウェルビーイングに取り組む企業や自治体、有識者への取材を通じて、さまざまな事例をご紹介しています。
今回は 「サステナブルPB※特集」 として、自社のPBで環境や社会に配慮したサステナブル商品を開発・展開している企業を取材し、ブランド設立の経緯や商品開発の方針、開発を進める中での苦労や工夫、お客様や従業員の反応、今後の展望などについてご紹介していきます。
※本稿では、環境負荷をできるだけ抑えた環境配慮型商品、サプライチェーン上の人権やフェアトレード、アニマルウェルフェアに配慮したエシカル商品、さらには社会課題の解決を目指すソーシャルグッド商品などを総称して「サステナブル商品」とし、こうした商品を開発・展開するプライベートブランドを「サステナブルPB」としています。
近年、小売業でサステナブルPBを展開する企業が増えている
近年、小売業で自社のPBの中で環境や社会に配慮したサステナブル商品を開発・展開する企業が増えています。
①イオン:「トップバリュ」
例えば、イオンは自社PB「トップバリュ」において環境配慮商品の開発を推進しており、「2025年までにすべてのトップバリュ商品を環境配慮商品に切り替える」と宣言したことも注目されました。

切り替え完了している商品数をホームページに開示している。
(出所:トップバリュ サステナブル)

②ファミリーマート:「ファミマル」
また、ファミリーマートのPB「ファミマル」は、品質と安全性にこだわり、「大切な家族に安心して薦められるレベルの品質と安全」を掲げ、「おいしい◎うれしい◎あんしん◎」をキーワードに商品開発を行っています。
「ファミマル」では、環境負荷の軽減のため、軽量化や紙などの代替素材への切り替え、植物由来のバイオマスプラスチックの活用など、環境に配慮した容器包装「ファミマのエコパケ」の導入を進めています。

スープの容器をプラスチックから紙素材に切り替えるなどの取り組みが進められている。
(出所:ファミマのプラスチック対策)
さらに、「ブルーグリーンプロジェクト」では、プラスチックによる環境汚染問題の解決を目指し、自然に分解される「スプーン」や「フォーク」、洗って繰り返し使える「ストロー」などのカトラリーを販売しています。また、原材料を植物性由来に置き換えたカレーやおにぎり、スイーツなどの食品を展開しています。

③アクシアル リテイリング:「Hana-well(ハナウェル)」
大手企業にとどまらず、地域に根ざした企業にも広がっています。その一例が、新潟県でスーパー、原信・ナルスなどを展開するアクシアル リテイリングです。
同社は、「おいしさ」に加え、体・心・地球にやさしい商品づくりを目指し、ブランド「Hana-well(ハナウェル)」を立ち上げました。「おいしさと、やさしさを。」をコンセプトに、食品ロス削減のための規格外食材を活用した商品や、地元の生産者を支援する商品など、地域の課題解決につながる商品開発を進めています。
さらに、ダイバーシティの視点を取り入れ、パッケージデザインには地域の美術館と連携し、障がいのあるアーティストの作品を採用し、商品の魅力を高めるだけでなく、アーティストの活躍の場を広げる取り組みにもつなげています。


このように、小売業による自社PBのサステナブル商品の開発・展開が広がり、ますます注目を集めています。
消費者はサステナビリティの認知と買い物での実践にギャップ
一方で、消費者の買い物におけるサステナビリティへの意識も高まっています。弊所が2023年に実施した調査によると、消費者のサステナビリティに関する用語の認知度は、「SDGs」が85.6%、「カーボンニュートラル」が73.6%と高く、「フェアトレード」も53.4%で過半数が認知している結果となりました。しかし、これらを普段の買い物で意識しているか尋ねたところ、「SDGs」は16.0%、「カーボンニュートラル」は4.4%と、意識している割合は低く、認知と実践の間にはギャップが存在することがわかりました。

(出所:調査レポート:消費者の買い物におけるサステナビリティの意識と小売企業の取り組み評価)

(出所:調査レポート:消費者の買い物におけるサステナビリティの意識と小売企業の取り組み評価)
◇詳しい調査結果はこちら👇

また、ボストンコンサルティンググループの2023年の調査では、環境負荷をかけない商品を「購入したい」と答えた消費者は68%でしたが、そのうち「普段から購入している」と回答したのは、その約半分の32%にとどまりました。この後者の層に対し、「環境負荷の少ない商品に対する購入意欲はあるが、行動に踏み出せていない理由」を聞いたところ、最も多かった回答は「どんな商品が環境負荷が低いのかよくわからない」(52%)でした。

環境に配慮したいという意識を持っている消費者は多いものの、実際にその意識を行動に移すことができていないのが現状です。
このような課題を解決するためには、適切な情報提供を行い、消費者が行動に移しやすい環境を整えることが重要です。
小売業には、消費者に対して環境に配慮した商品を選ぶためのわかりやすい情報を提供し、その選択をサポートするような取り組みを行うことが求められています。
サステナブルPB特集の方針
このような背景を踏まえ、取材ではブランド設立の経緯や商品開発の方針、開発過程での苦労や工夫、お客様や従業員の反応、今後の展望などについて伺います。
そこから、
✅ どのような企業がサステナブルPBを手がけているのか?
✅ 企業はなぜサステナブルPBを展開するのか?
✅ サステナブルPBを展開することで、企業経営にどのような影響があるのか?
✅ うまくいくケースと、あまりうまくいかないケースの違いとは?
について考察していきます。
広がり始めたサステナブルPBが消費・流通をどのように変えるのかを展望する本特集にぜひご注目ください!