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【レポート】小売店舗における日配品発注リードタイム延長の事例調査_2023‐2024

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公益財団法人流通経済研究所
上席研究員 石川 友博
研究員  寺田 奈津美
研究員 船井 隆

目次

はじめに

当研究所では、食品ロス削減のために、さまざまな取組みを行っています。

 その取組みの一つとして、農林水産省との連携のもと「食品ロス削減のための商慣習検討ワーキングチーム」による検討会を定期的に実施しています。そこでは、製造業・卸売業・小売業の企業が一同に会して、食品業界の商慣習に起因するロスの削減に向けて検討を重ねています。

 今回は、そのワーキングチームでの活動における商慣習調査の一部を抜粋して、小売店舗における日配品発注リードタイムについてのヒアリング結果をご紹介します。先進的な取組みとして、従来の代表的な慣習である「前日発注」から「前々日発注」に切り替えた企業の取組内容をまとめました。

用語チェック
  • 前日発注・・・店舗から発注した翌日にメーカー・卸が製品納入。リードタイム1日(LT1)。
  • 前々日発注・・・店舗から発注そた2日後にメーカー・卸が製品納入。リードタイム2日(LT2)。

■調査背景

 2000年に定められた食品リサイクル法(正式には「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」)は、食品循環資源の再生利用やロス削減の計画的な推進のため、概ね5年ごとに社会情勢に応じて基本方針が改定されることになっています。前回の改定が2019年だったことから、その5年後にあたる2024年から改定案の議論が始まり、当記事を作成している2025年2月時点では、内容のとりまとめが完了し、そこにパブリックコメントの結果を反映させる最終調整の段階へと入っています。 

 改定案では、事業系食品ロスの削減について、従来の目標値であった「2000年度比で50%削減」が達成されたことから、更なる取組みとして「2000年度比で60%削減(2030年度まで)」という目標が設定されました。その削減のために様々な分野での方針が提示されていますが、食品サプライチェーンの商慣習に関しては、食品製造業者における賞味期限の延長・年月表示などの大括り化、小売業者における納品期限緩和や発注の早期化(≒発注リードタイム延長)などに努めるべきことが盛り込まれています。そして、その推進のために「国による食品関連事業者への積極的な指導・助言」がなされることが明記される見込みです。

 一方で、小売業者の立場からすると、賞味期間の長い加工食品はともかく、牛乳やパン、豆腐、納豆などの日配品と呼ばれる期限表示が短い製品については、納品期限緩和や発注リードタイム延長をすると在庫管理や需要予測が難しくなることから、簡単に対応できるものではありません。

 そこで、当研究所ではこれから商慣習のアップデートに取り組もうとする企業への一助となるべく、先行してリードタイム延長に取り組んだ企業にヒアリング調査を実施し、その取組みの背景や前後の変化についてまとめました。

■調査概要

  • 対象:小売業種8社の関連業務担当者
  • 調査期間:2023年に開始し、2025年2月現在まで継続的に実施中
  • 調査方法:オンラインでのヒアリング
  • ヒアリング項目:
    • 受発注方法
    • 発注リードタイム延長の内容
    • 実施した経緯
    • 店舗、物流センター等における業務の再構築
    • 小売業とサプライヤーとの取組みの進め方
    • 小売業社内での部門間調整・意思決定の進め方
    • 実施による影響や効果
    • 実施前後の売上・廃棄率・欠品率等の変化
    • 店舗オペレーションの変化
    • 物流面での変化
    • メーカー側での食品ロス削減効果

サマリ

①小売業がリードタイムを延長した契機についての代表的な回答

  • 取引先からの相談に応じた
  • 物流2024年問題により、従来の商慣習を維持することは難しいという危機感
  • 物流コスト上昇リスクの顕在化(物流業者からの値上げ通達など)

②小売業にとってのリードタイム延長のメリット・デメリットについての代表的な回答

  • メリット
    • 取引先の食品ロス削減・物流効率化への貢献
    • 物流費の削減
    • 商品の安定供給性の向上
  • デメリット
    • 需要予測精度の低下に伴うリスク(廃棄、売上、機会損失の恐れ)
    • 体制移行時にコスト発生(システム変更、オペレーション変更)
    • 社がやらないなら自社だけやっても無駄であり損である(一斉に小売業がリードタイム延長しないと取引先はオペレーションを変更できない)

③リードタイムを延長実施している企業とそうでない企業の違いとして挙げられる要素

  • 組織制度
    • 物流部と商品部を統括する責任者がいるか/いないか
  • 評価制度
    • 物流コストが商品部担当者の評価に加味されているか/いないか
    • 対外的な貢献(取引先、物流業界、政策への貢献など)が評価されるか/いないか
  • 教育制度
    • 物流2024年問題や食品ロスの問題を深く知ることができる機会があるか/ないか
  • 物流制度
    • 自社で物流センターを持っているか/持っていないか

お問い合わせ

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お問い合わせ | サステナビリティ・コンパス

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